4期目の成果その6

4期目の成果その6

古民家活用のプロの力を借りる必要性を説き、専門団体と協定締結!

誰も住む人がいなくなった古民家を卓越したセンスで改修し、持続可能な仕組みによって運用するプロ集団がいる。
そのような情報をキャッチし、平成28年8月に会派視察研修で訪問した【一般社団法人ノオト(兵庫県篠山市丸山42番地)】の取り組みは私の心をわしづかみにした。
そのときのレポートをせっせと書いて議長に提出(議員、理事と共有)し、関係する市役所部署を招いて報告会を行い、平戸市への適用ができないか実現可能性を議論した。その場に地域おこし協力隊で空き家対策を行っていた青年も招き、情報共有した(その後彼が開始した古民家活用のビジネスモデルに一役買ったものと自負している)。
その半年後ぐらいだったか…ノオトの理事長が雲仙市で講演を行う(県の事業)ということを知り、ひとり車を走らせ、傾聴したことも今となっては懐かしい。


どのような事業を行っているか、は後回しにするが、一般質問や委員会での質疑の折に何度もノオトのような活動の必要性を盛り込んだ発言を続けてきた自負がある。

平戸市は今年度、プロ集団(ノオトではない)と「古民家再生による空家活用促進に関する協定」を調印した。まさに私が提案してきた手法そのものだ。古民家の中には新たな息吹により生まれ変われるダイヤの原石が埋もれている。これからの適用を楽しみに見守ることとする。


平成28年8月に視察したノオトの私なりの「事業内容まとめ」と「私の所感」を添付します。

 

ノオトの事業内容
 「社団法人ノオト」は兵庫県篠山市を中心に着実な手法で古民家再生を軸とした地域再生を見事に実現している。
 今回踏査した篠山市の「集落丸山」では、集落の一部古民家を宿泊施設として再生。2009年の開設以来、堅調な集客と採算性のとれた運営を実現している。全12世帯の小さな集落である丸山地域において、当時7世帯が空き家となっていたが、ノオトは空き家3棟をリノベーションし、一棟貸しの宿泊施設に再生(現在はそのうち1棟はリノベーションをきっかけにUターンした施主が居住し、2棟が宿泊施設として運営されている)している。
 一泊朝食付きの宿泊料金は、1棟貸しの基本料金4万円、プラス1人あたり5,000円のサービス料が付加される。大人3人で泊まったとすると一人あたり18,000円程度。ちょっとした高級旅館なみの値段だ。しかし、ここにノオトの想いがある。ノオトのこだわりは「都市部と農村部の違いをしっかりと認識した上で、都市部で培った最先端のノウハウと、数百年間も途絶える事のない田舎に残っている先人たちの知恵を融合する」こと。日本の昔ながらの暮らし、見過ごされてしまった日本の文化に着目し、「集落のおばあちゃんがあたり前にしている添加物の一切入っていないみそ作り」や「畝がびっしりと一様に刈られ芸術のような景観となっている収穫時期の田んぼ」など集落の住民にとっては当たり前すぎて気づいていない非常に魅力的な文化レベルの高さにきちんと価値を見出し、正しい価値付けを行いながら、集落に宿泊機能を持ち込んでいる。
 山々に触れられる立地に、緩やかに流れる時間。澄んだ空気に、野鳥のさえずり。携帯の電波も繋がりにくい。施設にはテレビも時計もない。観光目的ではなく農村に溶け込み暮らすような休息の日。それがノオトが見出した「集落丸山」での見過ごされてしまった本来の適切な価値であり、サービス提供の対価である。現在は稼働率30%を推移しながら収支バランスのとれた運営を行っている。


ここ以外にも地方の歴史的建造物の再生を行いがなら地域の活性化を実現している事例をもつ。

そのひとつとして、兵庫県潮来(いたこ)市の竹田城跡の麓にある旧酒造場を複合観光交流施設としてリニューアルした「旧木村酒造場 EN」、そして、兵庫県豊岡市の中心市街地に残るルネッサンススタイルの旧銀行建物を同じく複合観光交流施設として活用した「オーベルジュ豊岡1925」がある(今回、両プロジェクトの現地は踏査していない)。どちらもホテル、レストラン、カフェ、観光案内所などの機能を持たせている。
両プロジェクトでは、ノオトが指定管理者として選定され、多くのノウハウを提供した。結果、「旧木村酒造場 EN」の宿泊施設では、平均70%の稼働率を実現。「オーベルジュ豊岡1925」では結婚式の披露宴会場としても人気を集めるなど実績をあげている。

さらに、昨年オープンした篠山市の「篠山城下町ホテルNIPPONIA」(今回の踏査地)は、篠山城下町に点在する江戸時代から明治時代に建てられた空き家4棟を改修したもの。
この城下町ホテル構想は、4つの点在する宿泊施設を基点に、町全体を1つのホテル、そして町全体をホテルのアクティビティと捉え宿泊客の回遊を促し地域を活性化しようというもの。
「篠山城下町ホテルNIPPONIA」ではベッドやアメニティなどにも一流品を使い、食事も有名シェフによる地の食材を生かした本格フレンチを準備。ひとり一泊二食つきで「3万円~」に設定している。
同時に周辺町屋にも楽しげな店舗が続々オープンし、地域全体として活気を見せている。



まとめとしてノオトの古民家再生事業のポイントとしては、以下のものが挙げられる。

●既存の風合いを生かした古民家再生ノウハウ
まず大切なのは、空き家などの古民家の風合いを残し、改修しすぎないことだという。例えば、土間のあたりの煤けた黒い壁、土壁が少し崩れ中の藁が見え隠れする壁面。こうしたものを通常は綺麗に補修してしまうそうだが、ノオトではそれは行わない。既存の風合いを残し、照明やインテリアデザインなどを駆使して雰囲気のある魅力的な空間に作りあげる。これにより、改修費用が抑えられる。ノオトでは通常の1213の費用での改修を実現するという。
●地域の魅力や文化価値を適切に評価した価格設定
古民家を再生した後のホテルなどでは、地域の文化的な価値なども含めその土地の魅力を最大限に生かした価格設定を行う。「集落丸山」でも観光資源などはない地域だったが、農村環境自体に付加価値を見出し高級旅館並みの宿泊料金を設定している。「篠山城下町ホテルNIPPONIA」も同様である。
●適切なプロモーション展開
広告展開こそ行わないが、ホームページやSNSまたリーフレットなどの展開には、デザイナーを起用し、ホテルやレストランが持つ雰囲気を存分に伝えられるクオリティを心がけるとのこと。ホテルの宿泊予約などは、高級志向の高い「一休.com」と提携しているのも興味深い。

一言でまとめれば「建物の改修費など初期費用を抑え、地域本来の魅力を適切に評価する価格設定を行い、適切なプロモーションを行う」ことに尽きる。初期費用をかけすぎず、顧客単価を高めに設定するため黒字化の道筋をつけるという考え方だ。これらをもとに事業計画と投資リターンを投資家に説明できるなら魅力を感じてもらえるだろう。



私の感想

 ノオトはこれまで7年で60棟以上の古民家再生を行なっている。そこには洗練されたポリシーとノウハウが存在するはずだ。

 まず、報告の方で述べたように「集落丸山」という代表的な成功事例がある。あれはノオトが物件を借りて改修し、それを地元の方々が活用するパターンであった。かれらはそれを「地域運営方式」と呼んでいる。放棄田畑が2.1hあったものが、宿泊施設ができ、そこに地域が関わることによって2015年の5月にはまったくなくなってしまったという。

 二つ目に、「旧木村酒造場 EN」、「オーベルジュ豊岡1925」はどちらも建造物のリニューアルでは、ホテル、レストラン、カフェ、観光案内所などの機能を持たせたが、新たな公民連携の手法を用いていることが興味深い。
 どちらも建物自体は市の所有物である。通常こうした建物のリニューアルやその後の運営を民間に任せる場合、まず行政が先行して建物をつくってから、指定管理者を公募するのが一般的な進め方だ。しかし、行政が初期費用、運営維持費用(指定管理料/人件費・維持費など)を負担するため、集客などがうまくいかなければ運営維持費用が地方財源を圧迫し、事業廃止に至るケースも少なくない。
 そこでノオトが提案したのが「活用提案型指定管理方式」。建物のリニューアル前に指定管理者を選定し、設計段階から、構造・間取り・デザインなどを含めて運営する事業者の意見を取り入れ、建物の活用とリノベーションを実施するものである。建物の改修費用は行政側で負担するものの、その後の運営維持費は民間(指定管理者)が負担するというモデルである。これは行政、民間双方にとってメリットがあると思う。民間の指定管理者にとっては、建物が改修されてしまう前にビジネスプランにあわせた設計やデザインを提案できるため、よりスムーズなその後のビジネス展開が期待できる。一方、行政にとっては運営維持費用の心配がなくなるため、大幅な負担軽減となるからだ。

 三つ目に「篠山城下町ホテルNIPPONIA」のように、資金のほぼ全額を民間資金(投資ファンド)で賄っているパターンがある。
 ホテルとなった空き家は民間事業者であるノオトの企業体「株式会社NOTEリノベーション&デザイン」が買い取り展開している。この場合、地方行政の税金を使わずに純粋に民間事業者として展開できるため、地方自治体との調整や予算が必要ない。そのため、しっかりとした事業計画と投資リターンがコミットできれば、投資ファンドを利用することが可能になるのではなかろうか。

 それ以外にも「転売方式」や「サブリース方式」があることも説明を受けた。
転売方式」とは文字通り、所有者からノオトが空き家を買い取り、そこに改修費用をかけて第三者に売却するもの。
 そして「サブリース方式」は固定資産税をノオトが支払う条件で空き家を所有者から10年間無償で借り、改修しテナント(飲食店など)に入ってもらい、その収益で改修費用をまかなうものである。

 古民家カフェや古民家ゲストハウスなど、古民家再生の人気は高く、地方自治体などでも「空き家」対策としてもその活用が熱を帯びている。しかし収益をきちんと生み出し事業化のサイクルに乗せるには、多くの自治体や団体が苦戦しているのが現状だ。ノオトの持つ卓越したノウハウは今後とも大いに注目しながら本市に適用できることを見出していくべきであると強く思った。
 


 

 蛇足ですが…

 我々の行う視察は原資が税金です。有意義な視察先を見出し、しっかり勉強し、報告書にしっかり表現し、多くの人と共有し、平戸市に適用できることを創出する熱意と質が重要だと思います。
 議員それぞれがどのような視察報告を書いているか市民の皆さんが比較するのも市議会の質を高める手法の1つかも、と思います。